第九十三話 簡易と簡化の太極拳(11)

第九十三話 簡易と簡化の太極拳(11)

『易経』「繋辞伝」には「八卦相盪」を記した後に、

「乾(けん)は易をもって知り、坤は簡をもってよくす」

とも述べている。「乾坤」は陽陰であり、これは「易」と「簡」によることで知ることが可能となるとするわけである。つまり太極拳を知るには「易」と「簡」でなければならないのであり、それは陰陽を知ることでもあるわけである。陽陰は剛柔でもある。つまり簡易とは陰陽・剛柔を知るための方途なのである。鄭曼青は太極拳の陰陽をより明確にしようとした。例えば初めに出てくる左ホウはかつては楊家と同様に右掌を抑える形にしていたが、晩年は手首にアクセントを入れなくなった。これは前に上げる左手の「陽」と、動きを持たない右手の「陰」を際立たせるためである。ほかにも細かなところは多くあるが、目立って楊家と違っているのは雲手や斜飛である。これらも同様に左右の手の陰陽をより明らかにする動きになっている。

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