道徳武芸研究 游身八卦連環掌と鎮魂法(4)
道徳武芸研究 游身八卦連環掌と鎮魂法(4)
現在、東京国立博物館には一般的には「三本指の土偶」と称される「土偶」が展示されている。ただ、この土偶をよく見れば、かすかに親指と小指を認めることができる。しかも、その腕はひどく拗(ねじ)られている。これを八卦の観点からとらえれば、そのネジリの形から「龍爪掌」であることを認めることができる。加えて肩が外れるように肩関節のところが大きく開いている。これは腕に拗りを加えることで体が開かれることを示していると分かる。そこで改めて鎮魂法のことを思い出してみると、石上神宮には「フル」の他に「フツ」という古社名もあることに気づく(石上坐布都御魂神社・いそのかみにますふつのみたまじんじゃ)。一般には「フツ」は刀剣で物を切った時の形容であるという。また「ふつふつと湧き上がる」というようにエネルギーが活性化される様子でもあるとされる。こうしたことを合わせて考えると「フツ」は関節が外れる(開く)ことでエネルギーが活性化されることを示しているのではないかと思われる。つまり「フル」の系統の鎮魂は体などを震わせることでエネルギーの活性化を行うもので、「フツ」は拗りを加えることで体を開いて活性化をする鎮魂法であったことが予測されるわけである。こうしたことから、かつて日本には通臂拳につらなる「フル」と、八卦拳と同じ「フツ」の系譜にある二つの鎮魂法のあったことがうかがえるのである。