道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(3)

 道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(3)

鉄砂掌が相手にダメージを与えるために鍛錬法と思うのは誤解であることは述べたが、もうひとつ鉄砂掌にまつわる誤解には「秘薬」を使って効果を高める、つまり骨を強くする、ということがある。八卦拳でも虎の髄液を塗るという教えが伝えられているが、これは迷信に過ぎない。本来、鉄砂掌における「秘薬」は固いものを打つ時に生じるケガの消毒を行うためのもので、最も簡単な「秘薬」としては塩水が伝えられている、。現在では良い消毒薬も出ているのでそれを使えば良かろう。このように鍛錬はよく目的をよく理解して行わないとかえって自分を傷つけてしまうことになる。また太極拳や八卦拳、形意拳で鉄砂掌の鍛錬を重視しないのは殊更に「強い打撃」を打つことを戦略として持っていないからでもある。強い打撃を行うにはある程度の「距離」が必要となるが、太極拳などではそれよりも「当たる」ことを重視して比較的短い距離での打撃を行う。こうしたこともあって鉄砂掌はあまり鍛錬されることがないわけなのである。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)