道徳武芸研究 静坐と武術(15)
道徳武芸研究 静坐と武術(15)
静坐も武術ももとを正せば太古の「導引」から出たものであった。つまりこれらは本来的には源を同じくするのであり、おおきくいうなら「養生」術に属するといえる。また「養生」とは「衛生(生を衛る)」を目的としているわけである。「衛生」は現在の日本での言い方をすれば「護身」となろう。つまるところ「「導引」の目指していたのは「護身=衛生」であったのであり、そうした中で「導引」が攻防の技術へと特化して行くのもある意味で当然の成り行きであったと理解される。すでに見てきたように静坐と武術は中国において次第にひとつのものとして修されるようになるのであるが、これが日本では禅と武術がひとつのものとして行われたのと同じであることも既に述べた。またインドでは瞑想を主体とするラージャ・ヨーガが体操法を含むハタ・ヨーガへと発展して行ったとされる。確かに長い時間の瞑想は心身に大きな負担をかけることがあり、白隠のように心身症を引き起こす原因ともなり得る。そのために体操などにより体の調整をしておくのが適当なのである。ちなみにヨーガの体位法は中国の研究者の中には中国の導引がインドに伝わったものとする見方を披瀝している人もいる。単なる中華思想によるものか、また今後なんらかの形で実証されることがあるのか。興味深いところもある。