宋常星『太上道徳経講義」(8ー8)
宋常星『太上道徳経講義」(8ー8)
善治を政(ただ)し、
水が万物を育てることを「政し」とする。水が天に昇れば雨露となる。地に降れば河川となる。それぞれであるが天下にあまねく水は及び、万物を育てる働きをしている。水の徳は万物を潤し、その生成の変化は無窮で計り知れない。そうであるから「善治を政し」とあるわけである。水の政(ただ)す働きは、聖人が天地において、化育を助け、人々を安らかにし、万物を和合させるのと同じである。こうして天下のあらゆるものの存在意義を尽くさせるわけである。それぞれがその生を全うする。このように聖人はすべてが適切に治まるようにと働きをしている(善治を政す)のである。
〈奥義伝開〉「治」は整えるということで、水は善く整え正す働きがあることが述べられている。これは水の浄化作用をいうものと解することができるであろう。水により体の汚れを落とすことはどこにでも見られることであるし、それは現在でも放射能汚染を結局は水で洗い流さなければならないのを見れば、如何に水の働きが時代や環境を越えて有益であるかを知ることができる。水は汚れても、それを本来のきれいな水に戻すことができるわけで、そのことはどのように汚染されても水の本質は変わらないということである。それは人の「性」も同様で、どのように欲望に汚染されてもその本質は変わらない「善」を有しているとされる。