道徳武芸研究 静坐と武術(11)
道徳武芸研究 静坐と武術(11)
近代になって交通も発達して来て人々の交流が盛んになると中国武術の世界ではそれぞれの地域で閉鎖的に練習されていた「門派の壁」が問題視されるようになる。これは日本の柔道の影響もあるようで、日本の軍事力が強くなったのは強い兵隊がいたからであり、それは柔道や剣道によって鍛えられたためではないかと考えられるようになったのである。一方、中国では個々の門派が「最高」「最強」を称しているばかりで、これでは国家、国民の役に立たないと考えられたのである。そこで「国術運動」が起こり、各地に国術館を作って、中央国術館が統括するという構想が実行に移された。その一部は実現されたものの戦争も拡大したこともあって、中途でこの計画は挫折してしまう。中央国術館では掛け軸に武術の動きを描いたものを作成するなど(今ならDVD教材)の画期的な試みもなされていた。こうした風潮の中で、武術の根本である「性」つまり先天を開けば「門派の壁」を越えられるのではないかとする考えが生まれる。