道徳武芸研究 静坐と武術(10)
道徳武芸研究 静坐と武術(10)
およそ動物は人間にはない「能」を有している。空を飛ぶことができたり、早く走ることができたり、強い臂力を持っていたりする。ではなぜ人間にはそうした突出した「能」がないのか。それは人間が「知」を持っているからであると考える。人には突出した「能」はない。しかし「知」によりそれを得ることは可能である。つまり飛行機を発明することで鳥を越える「能」を人は手にすることができるのである。自動車を発明することでどんな動物よりも優れた走行能力を手にすることができるのである。人に突出した「能」がないのは、人が中庸にある存在であるからといわれる。人の「性」は中庸を得ている。一方、動物の「性」は中庸を欠いているので、突出した「能」を持っている。そう考えるのである。こうした視点からすればオリンピックに出るような優れた運動能力を持っている人が、普通の人より短命であることも多いのも、その生き方に中庸を欠いていたからと考えられるわけである。