道徳武芸研究 静坐と武術(9)

 道徳武芸研究 静坐と武術(9)

古代の中国において「静坐」は導引の一部として生まれたわけであるが、導引においては動物の動きが模倣されることが多かった。それがまた武術にも受け継がれて猴拳であるとか、蟷螂拳、蛇拳などが考案されるのであるが、そこにおいて興味深いのは動物の動きに似ているものと、似ていないものがある点である。一般的な猴拳は猿の動きに近いものが多いが、通臂拳などは白猿通臂拳などと称されるものの猿の動きを模倣することはない。また蟷螂拳も構えこそ蟷螂に近いが全体の動きそのものは全く蟷螂とは違っている。それはどうしてか、というならそもそも導引においてもそうなのであるが、動物の動きから学ぼうとしたのは個々の動物の有する「能」であった。猿であればすばやい動き、熊であれば強い臂力、鳥は軽やかさ動きといったそれぞれの「能」を会得しようとしたのであった。しかし長い歴史の中でいくら鳥の翼のようなものを身につけても空を飛ぶことができなかったように、その「能」を得るには動きを模倣しただけでは不可能であることが分かってきた。そこで考えられたのは「能」を生み出す根源としての「性」であった。動物の「性」を解明してそれを会得すれば、「性」から生み出される「能」も会得できるのではないかと考えられたのであった。


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