道徳武芸研究 静坐と武術(1)
道徳武芸研究 静坐と武術(1)
静坐は儒教で行われる瞑想であり、日本でも陽明学が紹介されるようになった江戸時代あたりから多くの儒者が静坐をしていたようである。ただ日本の場合はいずれも書物を通して静坐のあることを知るしかなかった。またその書物にしても、ほとんど具体的な方法については書かれていない。江戸時代の儒者もどのような静坐をしていたのか明確ではない。それは静坐が方法を重視しなかったことにも関係している。そうであるから禅を批判するのに「座り方の練習をしている」ということがよく言われている。確かに禅は結跏趺坐というかなり難しい座り方に習熟することが求められる。そして長時間、姿勢を正しての坐禅ができなければ「専門家」として認められることはない。これは「釈迦に習う」ということが前提としてあるからで、経典によれば釈迦は常に結跏趺坐をしており、悟りを開いた時には7日間坐禅をしたとされている。これと同じことをすれば悟りが得られるとする考えが禅宗の前提としてある。