道徳武芸研究 太極拳・秘伝の「採腿」について(2)

 道徳武芸研究 太極拳・秘伝の「採腿」について(2)

採腿の特徴は「踏み込むように蹴る」にある。ここで興味深いのは相撲の起源とされる野見宿禰と当麻蹶速との試合で、野見宿禰が当麻蹶速の肋骨と腰骨を「ふみ折った」とあることである。相撲に関心のある人からはこうしたシーンが理解できなく、倒れた当麻蹶速を蹴っているとする絵もあるようである。確かに肋骨や腰骨を蹴り折る程の威力を考えたならば倒れている相手への蹴りとするのは妥当であるかもしれない。しかし、そうであるなら倒してという描写がなければなるまい。『日本書紀』では「互いに蹴りあって」とある後に「ふみ折る」という事態があったことを記している。考えられるのは、この時「採腿」が用いられたのではないかということである。それは「採腿」が強力であるとされていることとも合致している。「採腿」は沈身の拳訣を得ればこのように強い蹴りとなるのである。


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