道徳武芸研究 『八卦拳真伝』と千峯老人・趙避塵〜武術と静坐〜(2)
道徳武芸研究 『八卦拳真伝』と千峯老人・趙避塵〜武術と静坐〜(2)
孫錫コンの「自序 八卦源流」には八卦掌を習ったことは記されているものの静坐についての記述はない。同書の「第五章 道功」では「道功、失伝すること久しく」とある。しかし、董海川について亡くなる時に「端座して逝く」とあるので静坐のままに亡くなったとも考えられる。また董海川は壁の近くで静坐をしていて突然、壁が崩れたが、その時には既に別のところに移動していた、とするエピソードもある。これは八卦の理を会得していたので事前に危険を避けることができた、ということを伝えるものであるが、エピソードの中で静坐をしていたことが示されているのは興味深いものがあろう。さて孫錫コンが静坐を学んだのは千峰老人こと趙避塵である。趙については写真と紹介が『八卦拳真伝』に記されている。それによれば趙は道号を順一子、通称が千峯老人で、小さい頃から迷宗拳を習っていたとある。長く警備会社(平開標局)に勤めてた。また特に「玄門」に関心があり各地を訪ねて道を問うこと数十年にして性命双修の奥義を会得した。それ以前は目も悪く、白髪であったが、奥義を得てからは眼光は「童子」のように生き生きとしており、髪も黒くなって行った。これを「衛生先天性命延年理学」として『性命法訣明指』を著した。また千峰山先天派金丹大道渡法主として数千人の弟子が居たとある。