道徳武芸研究 「呪物」と套路〜形、功、法の視点から〜(2)

 道徳武芸研究 「呪物」と套路〜形、功、法の視点から〜(2)

「呪物」と「物」の違いを生み出す要素としては「(奇異な)形」「物語」「伝承者」がある。これを武術の「形、功、法」で言うならば「形」は套路で、「法」は術理、「功」は練習ということになろう。そしてこれらによって武術の「力」である「勁力」が生み出されるのである。反対に言えば「形」「功」「法」のいずれを欠いても「勁力」は得られないということでもある。そのため中国では特に真伝を得ることが重要視されている。もし、こうした要素のいずれかを欠いた状態で稽古をしたならば、そこで偉えるのは単なる「力」である。これは「蛮力」とも称される。つまり武術の技とむすび付いていない単なる筋力に過ぎない力なのである。よく柔道家や相撲取りがプロレスラーに転身した場合には数ヶ月を費やして「見せる筋肉」を付けるという。本来、柔道や相撲では必要のない筋肉を強そうに見せるために付けるわけである。そうなるとその余分な筋力は蛮力を生むことになり、本来の柔道や相撲の動きにとってはむしろ邪魔になってしまう。


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