道徳武芸研究 武術とファンタジー〜植芝盛平、銃弾をかわす〜(1)

 道徳武芸研究 武術とファンタジー〜植芝盛平、銃弾をかわす〜(1)

日本において中国武術と古武道の新しいページを開いたと言って良い好著に松田隆智の『図説中国武術史』と『秘伝日本柔術』がある。前者は同じく松田の『中国武術』の改訂版ともいうべきものであるが、『中国武術』は呉図南の『国術概論』の形式を踏襲したものでもあった。それはともかく興味深いのは『図説中国武術史』に出ている片手倒立をしながら蹴りをする写真である。これは蘇昱彰が演じているもので、一枚は片手で倒立をしながら左右と上に向けて足を蹴り出している写真で、もう一枚は片手で倒立をして斜め上を相手の顎のあたりに向けて蹴っているという感じの写真である。これは少し武術を練習したことがあれば、とても技として現実的に使えるものではないことは容易に分かるが、何故かこの片手倒立からの蹴りを真似する人が多かった。あるいはこうしたものが、よく実態の分からない「中国武術」なるものへの神秘的な力の憧憬を象徴するものとして関心のある人たちの琴線に触れたのかもしれない。


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