道徳武芸研究 武術とファンタジー〜植芝盛平、銃弾をかわす〜(3)

 道徳武芸研究 武術とファンタジー〜植芝盛平、銃弾をかわす〜(3)

武術におけるファンタジー的なエピソードには他にも、植芝盛平が弾丸を避けた、という話もあるし、二十年ほど前には「五俵を担ぐ女性の写真」が「昔の日本人」の優れた身体性を象徴するものと称賛されたこともあった。また江戸から京までを三、四日で走る飛脚の「驚異的な体力」に関心が集まったこともあり、特別な走法があったのではないか、とも考えられていた。こうした武術におけるファンタジーとは、ハリー・ポッターの魔法と同じく「力」への憧れがその根底にあるようである。ただ武術における最も有効な力は最も単純な形、最も普遍的な形において発揮されるという皮肉な現実もある。ただ、それだけでは納得できない部分が武術修行者にはあるようで、そうした中に安易にファンタジーの要素が入り込んでしまう。それが名人譚という空想の枠組みに留まっていれば問題はないが、何らか現実の技として展開されるようになれば、システム全体の崩壊を招くことにもなってしまう。


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