宋常星『太上道徳経講義』(39ー6)

 宋常星『太上道徳経講義』(39ー6)

万物は「一」を得ているので存することができている。

谷の空間は「一」を得て満たされる(盈)だけではなく、万物にあっても「一」を得ればよく生きることができる。「万物」とは、いろいろな動きをするものであり、いろうろな色を持っている。生物であり無生物であり、善であり悪であり、邪であり正であり、醜くあり好くもあり、粗くもあり細かくもあり、柔であり剛でもあり、大きくもあり小さくもある。一切の形を持つ存在を総称して「万物」と謂っている。この「万物」はまた雨や露や風、雷として現れることもある。それによって寒さや暑さ、昼や夜が現れる。また人が「一」を得れば酷暑に耐えたり、霜や雪をものともしなかったり、卓越した才能を表したり、品位があったり、長生きをしたり、そして成長に従ってその姿形が変わったりもする。こうしたそれぞれの生存の理は、それぞれが「一」を得ているから働いている。「一」から生まれて「一」を成しているわけである。「一」から生まれるとは、生まれる時機があるということである。「一」と成るというのは、時機によって成長の働きが生まれるということである。つまり生きている上での考えられないような変化の機は、努力することなく自ずから生じるのであり、意図することがなくても自然に働きを持つようになるのである。これらは総て「一」を得ることでなされる。そうであるから「万物は『一』を得ているので存することができている」とあるのである。


〈奥義伝開〉あらゆる存在は「調和的統一」である「一」を得ているので安定的な運動をして適宜、変化もしている。それが崩れると、どこかに破綻が生まれることになる。また破綻が生ずることで崩れた調和はまた再び調和状態へと戻ることができる。


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