道徳武芸研究 「無名の樸」という文化風土(4)

 道徳武芸研究 「無名の樸」という文化風土(4)

中国武術でも時代を経るに従って「文化遺産」としての形が増えて来る。そこで複雑化の問題を解決するためにダイジェストが考案される。それが摘用拳である。また砲捶もある意味では多くの基本技を統合するものではあるが、砲捶はより高度な動きや複雑化した動きを学ぶためのものであって、「無名の樸」という視点からすれば、それは「道」への還元とは別な方向にあると言わねばなるまい。「道」への還元としては、太極拳で言えば鄭慢青が作った簡易式(鄭子太極拳)が最も成功している例であろう。これは鄭慢青が太極拳の原理によって、それに外れる技を省略することで張三豊の作った「太極拳」を再現させようとした試みであった。他にも太極拳には「簡易」とされるものもあるが、二十四式(簡化)は李天驥が形意拳をよくしたこともあって形意拳の動きの風格が強く、太極拳本来の「原理」とは必ずしも一致していないところがある。このようにイノベーションを起こすものとしての「無名の樸」への還元は容易ではない。しかし中国では何時の時代でも果敢に挑戦されて来ている。因みに日本では古いものも捨てないで増やして行く傾向がある。そのため古武道諸派では技の数が多くなり過ぎて却って個々の技のレベルが挙げられない結果になっている。


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