道徳武芸研究 力を使わない武術(2)

 道徳武芸研究 力を使わない武術(2)

日本ではここ数十年では中国武術は、太極拳を中心に北方の系統のものが主として入って来た。そうしたこともあって、南方の武術に対する偏見も生まれたようである。アメリカなどではブルースの影響で詠春拳が盛んであったが、日本ではブルース・リーが知られるようになった頃は「空手映画」とされていて空手に関心が集まったりしていたが、これが「中国武術」であると認識されるようになるのはしばらく後のことであった。そして、当時、唯一とも言える中国武術の情報発信者であった松田隆智の影響もあって「南拳よりも北拳が優れている」とする偏った意見が主流となり、ブルース・リーがよく練習した詠歌春などは顧みられることが無く、むしろ八極拳などの方が注目されるようになっていた。ちなみに八極拳で李書文は名人として知られているが、そうした「名人伝説」はどの門派にも同様なものがあり、中国武術界全体として李書文が突出した「名人」とされているわけではない。これも情報の偏りから生まれた「偏見」である。また八極拳は中国全土からすれば極めて限定的な認知しか持ち得ていない門派であり、拳術としてのステータスも形意拳などと比べると遥かに低いといえる。


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