道徳武芸研究 力を使わない武術(1)
道徳武芸研究 力を使わない武術(1)
日本の武術界では往々にして「力を使わない」ことが良いとされる傾向がある。そうした
方向で合気道や太極拳などは喧伝される。一方で「力」への信仰も深くあって、高度経済成長やバブルの頃は「パワーカラテ」などのようなものがもてはやされもした。こうした点から中国武術に目を転じてみると南方の武術は「力まかせて低級なもの」とする誤解が根強くあるようである。ちなみに中国人にはこうした偏見は全くない。勿論、太極拳をやっている人が、他の武術を批判する、といった流れでの「力任せである」ということはある。そうした独尊的な考えは温度差はあっても、多くの武術家に等しく見られることでもある。基本的には武術家は自分のやっている武術が一番良いと考えている。大きく言えばその門派に自分の命を預けて居るのであるから、自分の修業しているものが第一と考えたくなるのも無理からぬことでもあろう。