道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(4)

 道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(4)

「点穴」には死穴などもあって、そこを打つと相手を殺すことも可能であるという。確かに人体の中心線あたりは弱いところがあり、そこを打たれるとおおきな衝撃を受けるものである。また「当たりどころ」というように、絶妙のタイミングで当たると思いの外のダメージを受けることがある。こうした偶然の現象を見て、そこに何らかの法則を見出そうとして生まれたのが「点穴」の考え方である。またこうした偶然のヒットは同じようなところを打っても、余り大きなダメージを与えることができないことがある。これらには何らかの原因、何らかの法則があるのではないかと考えたわけである。そこでその手がかりとなったのは「経絡」の身体観であった。同じようなところを打っても利くこともあれば、利かないこともあるのは、時間によってダメージを与えることのできる経絡が移動しているからではないかと考えたのである。ちなみにブルース・リーの『截拳道への道』には詠春拳に伝わる時間によって変わる経絡の図が載せられている。また自称忍者の藤田西湖は『当身活殺法明解』を著して死穴などにも触れている。ただその真偽の程は明らかではない。確かに身体にはコメカミや胃のあたりなど打撃に弱い部位はあるが、それは既に知られている以上のものではない。こうした部位の存在と偶然のダメージの生じることのあることから「点穴」という迷信も生まれたのであった。


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