道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(1)

 道徳武芸研究 中国武術における誤解と迷信〜鉄砂掌と点穴〜(1)

基本的には中国の国民性は古くから合理性を重視する傾向があるので、一見して不可解なものにも、その根底には合理的な視点を見ることができる。中国武術でも、例えば「鉄砂掌」などは相手の骨をも打ち砕く力を得られるとされる、また特定の部位を突くと相手を死に至らしめてしまうとされる「点穴」等もある。普通に考えれば「荒唐無稽」の一語で済まされてしまうことであるが、なぜこうしたものが長く伝えられてきたのかを考えてみると、その根底には合理的な思考のあることが分かる。中国武術で鉄砂掌は広く行われている。よく太極拳や形意拳、八卦拳などでは鉄砂掌は行わないと誤解されているようであるが、これは個人の判断による。ただ鉄砂掌を鍛錬しても手そのものが鉄のように固くなるわけではない。鉄砂掌を鍛錬するのは相手にダメージを与えるためではなく、自分がダメージを受けないようにするためなのである。つまり相手を打った時の衝撃に耐えられるようにするための鍛錬が「鉄砂掌」なのである。よくボクサーが素手で相手を打って拳の骨を折ったとか、手首を痛めたという話を聞くが、そうしたケガが生まれるのはボクサーが常に具ブローブで拳や手首を保護、固定しているためである。もし素手で相手を打とうとするならば、それに耐えられる拳や手首の鍛錬をしておく必要がある。


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