道徳武芸研究 中国武術の漢字学(3)

 道徳武芸研究 中国武術の漢字学(3)

形意拳には十二形拳にダ形拳がある。この「ダ」は、ヨウスコウ(揚子江)アリゲーターであるとされている小型の鰐であり、主として南方地地域に住んでいるという。そうであるとしたら形意拳の起源は、北方ではなく南方ということも考えられなけらばならなくなる。一方でこれは「ダ」ではなく「鼈(ベツ)」であるとする拳譜もある。「鼈」であればスッポンということになる。一般に技法名は口伝であるので、音が同じで漢字が違うというのはよくある(例えば形意拳では「サン拳」が「賛」「讃」「手偏に賛」などで記される)が、「ダ」と「鼈」のように字形が似ていて違う音(読み)というのは見られない。これは出版などを通して拳譜が広く知られるようになってから、限られた地域でしか居ない「ダ」よりも「鼈」とする方が妥当であると判断されたためのように思われる。手足を回すように動かして泳ぐ姿は「ダ」も「鼈」も似ているが、あえて「ダ」を「鼈」としなければならない理由はない。


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