道徳武芸研究 中国武術の漢字学(1)

 道徳武芸研究 中国武術の漢字学(1)

中国武術では漢字を用いて技法名が記されている。そのためかつては「拳譜」が秘密にされていた。漢字であるから「拳譜」を見れば大体の技のニュアンスが分かってしまうからである。例えば白鶴亮翅なら「両手を丸くして上に上げた形」であるし、白蛇吐信は「掌を突き出す形」である。八極拳には「猛虎爬山」という技があるが、これは李書文の得意技として知られている。これにはまた「猛虎『硬』爬山」とされる場合がある。「爬山」は「山に登る」ということであるので、これは「猛々しい虎が山に登っている」ようなイメージの動きであることを技法名は示している。実際には腕で相手の攻撃をはたき落とすもので、これによって、その防御ラインを突破するわけである。つまり上から下へと両腕ではたき落とす動作が、猛虎が山に登る動きに例えられているのである。ただ一方でかつて武壇の技として発表されたものが、ただ中段への肘打ちであったことに疑問が呈せられている。中段への肘打ちは技法名からしても、ととも「猛虎爬山」とすることができないのは明らかである。後に腕ではたき落とす動きが加えられたものが公開されたが、これは技の順序としては逆である。相手の攻撃をはたき落としてから肘あるいは拳で打つ、というものでなければならない。


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