道徳武芸研究 一箇条の不思議(8)

 道徳武芸研究 一箇条の不思議(8)

近世には「座り相撲」なるものが流行していた。これは『北斎漫画』にもそのイラストが出ているし、民俗行事(石上神社・兵庫県、荒神さん相撲・佐賀県、ねまり相撲・青森県など)として今でも行われているところもある。また遊戯としても親しまれているところもあるようである。こうした「座り相撲」のようなものとして大東流の座技は修練されていたという側面があるように思われる。これが純粋に武術の座技であるなら竹内流に見られるような脇差しを用いた技が想定されなければならないであろう。脇差しを用いた技が皆無であることは、大東流の座技が近世の柔術とは全く別のところから発想されたものであることを示している。要するに「一箇条」は中段の構えの変化を練るものであり、それ故に中国武術でも「基本」とされている。また、大東流や合気道にあってはその成立をよく考えて「技」として適切に修練されるべきことを指摘しておいた。伝統的な「遺産」はその伝承において多くの錯誤が含まれている。そうしたものによく留意しなければ、価値ある「遺産」を充分に活かすことはできない。


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