道徳武芸研究 一箇条の不思議(7)

 道徳武芸研究 一箇条の不思議(7)

ラン雀尾が「太極」拳の総手であるなら通常、言われているように「ホウ」と「リ」、「擠」と「按」が陰陽の関係になっていなければならない。つまり「ホウ」は上への崩しで、「リ」は下への崩し、そして「擠」は前へ「按」は後ろへとなれば陰陽=太極の理が表現されているということになるのであるが、前回にも説明したように「ホウ」から「リ」への変化は右手が相手の腕の下にある関係でうまく行かない。また「擠」の前への崩しに対して、「按」は後ろではなく下への崩しとなっている。またラン雀尾の前には「ホウ」の動きがある。そのため「左ホウ」に続いてラン雀尾は「右ホウ」から始まるので左右のホウを行うようになる。これは太極拳でホウが、太極拳独特の力の使い方である「ホウ勁」の基本であるからに他ならない(重要な技は套路に何度も取り入れられて繰り返し練習できるようになっている)。それはともかくラン雀尾において陰陽の形が完全でないのは、太極拳は本来は「太極」ではなく、ただ十三の基本動作を集めだだけの十三勢であったことをよく示している。太極拳もあまり「太極=陰陽」にこだわると本質が見えなくなってしまう。


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