道徳武芸研究 『老子』第三十二章と意拳の試み(2)

 道徳武芸研究 『老子』第三十二章と意拳の試み(2)

「知」を秘伝、奥義として閉鎖的に扱うことが文明の発達の弊害となったことが広く認識された近代中国では、中国武術にあっても「門派」への疑問が大きくなって行った。こうして広く各派の技術交流を促すために中央国術館構想が実施されることになる。これは中央国術館を中心に各地に国術館を設けて広く技術の交流を促し、門派の閉鎖性を打破しようとするものであった。こうした中にあって孫禄堂によってひとつの理論が提唱されるようになる。それは実と虚の伝統的な考え方によるものであった。実際の「技」を「実」として、その動きはこだわりのない動きである「虚」から生まれる、としたのである。そうなるとあらゆる「実」の動きは、全て「虚」へと還元できることになる。これは老子が幾筋もの川の水が、海へと流れ込む譬えで「大道」つまり「樸」を説明したのと同じである。つまり例えば武術の技である前蹴り(実)は、足を上げるという動き(虚)から生まれているのであり、足を上げるという動きは、前蹴りだけではなく、後蹴りでも横蹴りとしても等しく展開されることになる。


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