道徳武芸研究 実戦武術と競技試合(1)

 道徳武芸研究 実戦武術と競技試合(1)

本来、日本の武術には一位、二位などの序列を決める競技試合は存在していなかった。もちろん試合そのものが無かったわけではなく、それはあくまで個人の技の探求においてなされるものであり、順位を争うものではなかったのである。順位を争う競技としての試合が武術に取り入れられたのは柔道が始めである。柔道は柔術を西洋スポーツの観点から捉え直して国民体育として広めることを意図して作られた。国民体育とは国家に奉仕できる国民を育成するということであり、それは優秀な兵士を育てることを第一義としていたといっても過言ではあるまい。こうした考え方は「教育勅語」などにも明瞭に現れている。中国では極東の小さ国・日本が大清国、大ロシアと互角に戦うことができたことの背景に柔道教育があったことに気づいていて「強種強民」をスローガンに各地に「国術館」を作って日本と同様、武術による「国民」の育成を考えた。しかし、その政策は戦争により十分な完成を見ることはなかった。


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