道徳武芸研究 実戦武術と競技試合(6)
道徳武芸研究 実戦武術と競技試合(6)
実勢の場において瞬時に的確な判断をするためには、そうした状況に身を置く訓練をしていなければならない。それが形稽古である。形稽古の第一は実戦の場合に冷静であることができるようになることにあり、第二として技を取得して攻防においてそれを優位に展開できるようになることを目的とする。勿論、こうした技術を使うにしても冷静であることが大切であるのは言うまでもなかろう。つまり、勝つことだけを考える競技試合を前提とするスポーツ武道と実戦を大前提とする武術とではそのシステムが全く異なっていることを忘れてはならない。つまり競技試合を前提とするスポーツ武道では、勝つことだけを考えて対戦をしても、互いに安全が保たれるように工夫がなされている、そのようにシステムが構築されているのである。そしてそれらは競技試合の場に限定しての比較であるならば、当然のことにスポーツ武道の方が実戦武術よりも有利であることも間違いのないことなのである。しかしそれを以てスポーツ武道の優位さを説くことは不適当であり、あまりに一面的な見方であるといわねばなるまい。