道徳武芸研究 易と太極拳(3)

 道徳武芸研究 易と太極拳(3)

王宗岳が張三豊の十三勢に太極の理を見出したのは十三勢の「ホウ、リ、擠、按、採、肘、レツ、靠、中定、進、退、右眄、左顧」の中で特に囲繞の変転を見出したからなのであろうか。ベースとなる四正の「ホウ、リ、擠、按」を見てみると、「ホウ」は上への崩し、「リ」は下への崩し、「擠」は前に押す、「按」は下に押す、であるから「上、下」「前、下」となり「擠、按」は対の関係にはなっていないことが分かる。動きが太極の理そのものであれば「按」は後ろに押すというものでなくてはならず、これでは武術としての動きは成り立たない。また四正の応用とされる四隅の「採、肘、レツ、靠」に至っては全く対の関係つまり太極の理を見ることはできないのである。ただ王宗岳の太極拳論を見ると、王は「動」と「静」を「陽」「陰」としてそこに太極の理があることを考えていたと思われる。そうなるとあらゆる武術は太極拳となってしまうが、おそらく王は太極拳における「静」を強調するために十三勢を太極拳と称することを提唱したものと思われるのである。


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