道徳武芸研究 易と太極拳(2)

 道徳武芸研究 易と太極拳(2)

陳キンは陳家砲捶の核心である「纏絲勁」を「螺旋」の動きと規定して、その動きが易を表現しているとしている。そうであるから陳家砲捶は太極拳と称することが可能であというわけである。『陳家太極拳図説』はまさにそれを証明しようとしたものであり、纏絲勁が「螺旋」の動きであるとする考え方もここから来ている。しかし、ここで問題となるのは易は螺旋を表現してはいないということである。本来、易は単に陰陽をいうのみでその変転はあっても、円環する動きを示すものではない。しかし、後には円をして八卦が示されるようになり(『易経』の頃には見られない)、陰陽の消長を天における日月星辰の動きである周天と等しいものと見るようになって行くのである。しかし、この段階でも周天はあくまで円周の軌跡における変化であって、螺旋の動きではない。それを螺旋にまで繋いで行くところに陳キンの苦心があった。ただ太極拳では楊家を見ても分かるように「螺旋」の動きをベースとしてはいない。ただ円の動きであるに過ぎない。実は陳キンが太極拳の核心として見出そうとしていた「螺旋」は、王宗岳が十三勢を太極拳として認めた時の陰陽観とは別の視点に立っていたのである。


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