道徳武芸研究 大東流の「伝承」について(10)

 道徳武芸研究 大東流の「伝承」について(10)

塩田剛三が開いた当身の可能性から見えてくるのは、中国武術の一指禅の秘密にまで及ぶものがある。一指禅は一本の指で相手を倒すとされ、この功を得るために指一本で倒立をしたりして指を鍛錬しようとする人もあるが、そうした鍛錬にはほとんど意味がない。一指禅そのものの意味を知るには、ここに「禅」とあることを見逃してはなるまい。「禅」つまり瞑想的、霊的なものとしてこの「一指の禅」はあるわけなのである。指と禅では「指月の譬」がよく知られている。映画「燃えよドラゴン」の冒頭でもブルース・リーがこれをして少年を教えるシーンがある。つまり重要なのは月を指す指ではなく月そのものである、という教えである。この時の指の形が「一指」となることから一指禅の名称は由来している。一指禅においては「一指」そのものが重要なのではなく、それが示している「月=禅=霊的な境地」が重要であることを忘れてはならない。そうであるか指を鍛えることには何らの価値もないのである。


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