道徳武芸研究 大東流の「伝承」について(6)
道徳武芸研究 大東流の「伝承」について(6)
興味深いことに植芝盛平はひじょうに霊的な力を得ることに執心しており、息子の吉祥丸によれば霊能者とされる人が居れば大金を与えて教えを乞うていたらしい。ために家計はしばしば火の車であったという。そして時には半紙を加えてローソクの火を凝視したり、太陽を見つめたりするようなこともしていたという。大本教を信奉したのも出口王仁三郎に師事することで霊能力が得られた、と思ったからである。武田惣角も西郷頼母に関しては霊的な知覚を持っていたとする話を語っている(何時もとは違うところで水を汲んで茶を出したら「違う」と叱られた等)。一方で頼母が武術を使ったとするエピソードは無い。前回も触れたが、こうした霊的な力を求めることの「背景」にはかつての「遍歴」して「神」を授けて周った人たちの「記憶」が残っていたのかもしれない。つまり技の伝授は、芸能を見せるのと同じく、あくまで霊的な力を付けるための方途であるという視点である。