宋常星『太上道徳経講義』(19ー1)

 宋常星『太上道徳経講義』(19ー1)

美しく飾り立てることを虚飾という。見かけを排して実質を重んじるのは堅実である。虚飾と堅実とは本来的には相容れない。「上」が虚飾を良しとすれば、「下」は必ず虚飾は堅実より重要なものと考えるようになる。「上」が堅実を良しとすれば、「下」は必ず堅実は虚飾より重要なものと見るようになる。堅実は虚飾に勝っている。虚飾を排して堅実を取るのであれば、その害は少ないことであろう。虚飾が堅実に勝るようになると、無意味な飾りばかりが行われるようになり、天下の無知なる人が、これによって害されること甚だしい。この章で述べられているのはまさにそうしたことである。

この章では「樸」や「素」が重要であると教えられているが、これは天下の永遠なる戒めでもある。虚飾を排して実質を取る。虚飾を軽んじて堅実が重んじられなければならない。


〈奥義伝開〉ここでは為政者が、聖、智、仁、義、巧、利などを提示して来た時にどのように対すれば良いのかを述べている。大体において為政者が「道徳」をして民からの収奪をしようとする時には、初めには大きな「徳」を提示する。「聖」であるとか「智」といったものはある意味で普遍的であり、誰も反対するものではない。また「仁」や「義」はそれを用いる場合によっては反対を言う人もあるかもしれないが、これも大体は賛成するであろう。そして最後には「巧」や「利」で民を誘おうとするわけである。ただ「巧」や「利」になると反対を表明する人も出てくるが、こうしたものは民の中から自発的に賛成をする者が出て来ることを老子は「盗賊」として表現している。それは民の本当の「利」を奪い収奪する者に加担する行為であるからである。


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