道徳武芸研究 合気と柔術〜なぜ大東流は「複雑」化したのか〜(1)

 道徳武芸研究 合気と柔術〜なぜ大東流は「複雑」化したのか〜(1)

1981年日本武道館の日本古武道演武大会で大東流が演武を行ったが、その時に披露された複雑な固め技には多くの人が驚くと同時に、合気道との違いをも実感したのであった。これより前、中国武術の研究家であった松田隆智は78年に『秘伝日本柔術』を出版して大東流の「神秘」的ともいうべき「合気」の技法の一部を紹介していた(松田は往々にして神秘的であったり、珍しかったりするものを好んで紹介したが、それはまたマニア心をくすぐるものでもあった)。松田が佐川幸義の技を本に載せた時には「合気」を使うことで相手を動けなくさせることができる、という文脈の中で相手の手足を絡め取るような「複雑」な技法が提示されていた。しかし、武道館での演武以降は次第に「合気道との違い」ということで一見して分かりにくい「合気」云々よりは「複雑」な技法の方に人々の関心が集まるようになって行った。大東流では「合気道で行われているのは初心の簡単な技ばかり」という批判も見られた。


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