道徳武芸研究 八卦掌における吉祥寓意(2)

 道徳武芸研究 八卦掌における吉祥寓意(2)

龍形八卦掌にしても、八卦拳にしても八母掌の最後にこうした吉祥を象徴するものが名称とされているのは興味深いことであろう。こうしたところからしても龍形八卦掌を編んだ人物が八卦拳のかなりの奥義を知っていたことが分かる。それはともかく八掌を練り終えて至るべき「吉祥の地」とは、心身が天地と一体となったあるべき状態に変化したことを象徴しているに他ならない。これは太極拳の最後が「合太極」で、太極と一致した状態を象徴するのと同じである。「八仙」は八卦であり、八母掌の八本の技のこと(龍形八卦掌では七本目に二つの技が入っているので八仙過海までに八本の技が出ている)で、「過海」は両手を合わせて上下に変換する動きが船を漕いでいるようであることから名付けられている。つまり龍形八卦掌において八仙過海は八卦掌の「総合技」「奥義技」として他の技とは一線を画するものとなっているのである。こうした「過海」の動きを、孫禄堂は「鉄糸球」と形容している。よく孫禄堂は太極拳を「皮球」、形意拳を「鉄球」として、八卦掌を「鉄糸球」に例えていたとされるが、これは具体的には「接触点」の「圧」の処理の仕方をいうものである。ここに孫禄堂はそれぞれの拳の特徴を見たわけである。相手とのファースト・コンタクトをどのように処理するのか、これは確かに武術において工夫のなされるところではある。


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