道徳武芸研究 ブルース・リーのワンインチパンチと椅子(3)

 道徳武芸研究 ブルース・リーのワンインチパンチと椅子(3)

どの国においても軍の関係部署では「兵員が足りない、武器も足りない」と言って軍費の増額を求めるが、それが妥当であるのか否かを判断するにはその前提なとなる戦術と戦略が明らかにされなければならない。しかし、そうしたことの多くは「軍事機密」と処されて明かされることがない。つまり兵員、武器がもたらす「威力」がどのように構築されるのかを判断するには、戦術と戦略が共に明らかにされる必要があるのである。寸勁は特殊な体の使い方をして短い距離で加速をつけることによって「インパクト」を生じさせることを主目的とする。これは膝の後ろを急に押された時にいっきにバランスを失うのと同じで効果をねらっている。大きくはなくても「突然の衝撃」が与えられると、人はそれを理解することができず、体勢を立て直すことがすぐにはできない。この時にさらに攻撃を加えるとそれは非常に有効なものとなる。ブルース・リーは寸勁を打ってからもさらに拳で相手を押している。実はこれは寸勁の使い方としてはまったく正しいのである。一般的な寸勁の演武ではインパクトを与えるだけにしているが、それは相手の体勢が大きく崩れることによって生じる危険を回避するためであるが、ブルース・リーの二度押しはワンインチパンチの「威力」を大きく見せることに効果があるだけではなく、寸勁の使い方を示すものとして極意にわたるものを示す演武となってもいるわけなのである。


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