道徳武芸研究 ブルース・リーのワンインチパンチと椅子(1)

 道徳武芸研究 ブルース・リーのワンインチパンチと椅子(1)

ブルース・リーはよくデモンストレーションで「ワンインチパンチ」を行っている。「ワンインチパンチ」は中国武術では「寸勁」「寸拳」などと称されるもので、一寸(3センチくらい)の距離から拳を打って相手に一定程度のダメージを与え得るとするテクニックである。当然、拳打は適度な距離から打つことで、その威力が得られるわけなのであるが、ワンインチパンチはそのセオリーの中にはない。ために、それは見る者をして不可思議な感じを抱かせることになる。人は経験のない行為を見せられるとそれを理解することが難しい。そうした理解不能な部分が「不可思議」なる印象として残るわけである。一般的な寸勁の演武はただ相手がバランスを崩すことを見せるだけであるが、ブルース・リーの場合には相手が大きく倒れ込むことが多い。それはバランスを崩したところに「椅子」という障害物が置かれているためである。そうするとこの「椅子」は単に「ワンインチパンチ」を派手に見せるためだけの演出の小道具であったのか、という疑問も生まれてくる。


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