道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(14)

 道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(14)

柔術の基本としての「正座」、剣術・居合術の基本としての「正座」、心身を整える基本としての「正座」があるとして、この「正座」を中心とする体系を考えたならば、日本的な鍛錬法が確立できていたかもしれない。「正座」は柔術としては膝行から相手を付けての技として展開され、剣術では居合から相手を付けての技として展開させることができる。このような大きな可能性を持った体系が構築され得る可能性はあったのである。また現在でもそれは不可能ではないが、実質的には正座による瞑想は瞑想法としてはあまりやり安いものではない。ヨーガにも正座に似た坐法(金剛坐)があるが瞑想時に使われるのは一般的ではないようで、やはり結跏趺坐(蓮華坐)がもっぱら用いられる。また膝行を鍛錬として行おうとするなら畳の上でなくてはならず場所の制限もある。居合についても同様で基本的には畳の上でなければ練習できない(現在、居合は剣道場で練習しなければ場所が多いので板の上で練習することになるが、その場合には膝パットがなければ膝を炒めてしまう)。このように「正座』自体が鍛錬法として必ずしも扱い安いものではないところに大きな問題がある。


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