道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(13)

 道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(13)

徳川慶喜は健康法として膝行をしていたという(『徳川慶喜の子供部屋』)。また福沢諭吉は居合を抜いていたらしい(『福翁自伝』)。これらに共通するのは「正座」である。これまで居合が正座からの抜刀を取り入れて、本来の抜刀術から心身の鍛錬法としての色合いを強くして行く傾向が見受けられるようになることを指摘しておいた。現在、膝行は合気道でよく練習されているが、これは神道祭祀などでも基本的な身法であり、かつては日常的なものであった。これが柔術でも基本となり、居合に取り入れられて剣術でも基本となったわけである。また正座は岡田虎次郎によって健康法としての瞑想法が提唱された。これは戦前ひろく社会に受け入れられて今日でも一部に信奉者がいる。しかし正座法は岡田の急逝により短期間でブームは収束してしまうのであるが、もしこれが長く続いて坐禅と換わるものとして武術との関係が深められれば、日本の禅としてのおもしろい展開があったのかもしれない。


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