道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(11)

 道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(11)

柔道・柔術的な丸い動き、それと剣道・剣術的な直線の動き、これらが共にあることで身体的な動きの鍛錬としては完璧なものとなることが歴史を通じて分かってきたことが武術史を通して知ることができる。かつて柔術や剣術は各地の藩校などでも共に師範が居て教えられていたが、それらが「ひとつのもの」として認識されることはなかったようで、剣術をベースに柔術がそのシステムの中に統合されることもなかったし、また柔術の中に剣術が同じ理論の中において教授、練習されることもなかったのである。それは日本においては柔術にしろ剣術にしても共に相手を付けての稽古であったことが大きく原因していると思われる。つまり抽象化が進んでいなかったので、違うシステムとの融合が生じにくかったわけである。これが中国武術のように一人での形の稽古が主体であれば、攻防の動きは抽象化され、それが突きの技としても、投げの技としても解釈できるようになる。実際に套路は「打、拿、シュツ(手偏に率)」と変化するといわれる。つまり套路にある一つの動きは「突き蹴り(打)」として使えるのに加えて「逆手・関節技(拿)」や「投げ技(シュツ)」として展開することも可能である。こうした「曖昧さ」が一人形の套路にはあるので、丸い動きの八卦掌と直線の動きの形意拳があたかもひとつのシステムであるかのように練習することが可能となっているのである。


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