道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(3)

 道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(3)

一方、近世には剣術に対応するための柔術も生まれる。これは柔道として現代に伝わっている。また更に柔術を用いて剣を使うのを制しに来た時に対するための「剣術の柔術」も考案されるようになる。これは合気道となった。これらの大きな違いは背負投げや腰投げのないことである。剣を腰に帯びている状態では相手を背負うことも腰に乗せることも困難である。そこで小手返しや腕搦み(四方投げに似ているが転身はしない)のような技が展開されることとなる。こうして近世を通じて剣術と柔術は共に修練されることが多くなる。しかし近代以降は剣術が一旦廃れてしまうものの幕末あたりから盛んになった竹刀を用いた稽古法が剣道として復活する。こうして軍隊や警察では柔道、剣道が代表的な武道と見なされるようになる。現代でもその傾向は変わりなく日本武道の第一は剣道、柔道でそれに次いで杖道、合気道、空手道があることとなる。こうした流れは競技化、スポーツ化と一体のものでもあった。柔道、剣道がひろく行われるようになったその大きな要因に競技化のあったことを忘れてはなるまい。柔術から柔道、剣術から剣道へとする変遷の中で競技化が進められて、多くの人に興味が持たれるようになると、術から道へとする「精神性」の面を忘れてはならないとされることも出てきて、そうした中で坐禅への改めての注目がなされることにもなる。これはまた戦前の西田幾多郎や鈴木大拙に代表されるような「禅」ブームとも深く関係している。


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