道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(1)

 道徳武芸研究 柔道、剣道と坐禅〜身体的な要求とシステム〜(1)

日本では近世初頭あたりから剣術と坐禅との接触が始まるようである。それは沢庵と柳生宗矩との逸話でも知ることができるし、新陰流の伝書である「兵法家伝」には禅の影響が明らかである。それ以前に華道や茶道では既に禅との接触があった。華道の元となった立花は仏への供養のひとつであるし、喫茶は栄西に「喫茶養生記」があり禅宗と深い関係がある。また利休は利休居士と称されるように大徳寺で修行をした在家の仏教信者である。更に幕末には山岡鉄舟が出て禅による心の鍛錬が剣術でも必要であることが強調されるようになる。その流れは現代にも少なからず受け継がれている。ただ禅(瞑想)が武術の修行にどのように役立つのかは明確に示されることなく、なんとなく武術の「精神性」をシンボライズするものとして「坐禅のようなこと」が行われているに過ぎないように思われる。それは武術が武道であること、剣術ではなく剣道であり、柔術ではなく柔道であるためのひとつの担保としての必要性がなんとなく認識されているからのようである。


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