道徳武芸研究 太極拳における歩法と勢(8)

 道徳武芸研究 太極拳における歩法と勢(8)

最後に「中」のつま先をあげる歩法について二十四式でそれが見られることについて触れておこう。二十四式では下がるだけではなく左右への転換をも含む動きにおいて、かなり大きくつま先をあげる。しかしこれでは動きの「勢」が途切れてしまい、大きな勢を生むことはできない。あくまで「中」の歩法は前後の「勢」が保持されたものでなければならない。二十四式においてこうした動きが生まれたのは、それを考案した李天驥が形意拳を主体にしていたからであろう。形意拳では「束」身という溜めの身法を用いる。そこでは一旦「勢」を途切れさせて十分な溜めを作ろうとする。しかし「捉」によって相手は捉え続けていなければならない。この勁が途切れているようで、続いているという攻防の理の「矛盾」を解決したのが八卦掌から得た滾勁なのであるが、これについてはまた機会があれば説明をしたい。李天驥は推手でこの「束」をよく用いていた。これをしても李のベースが形意拳であることが分かる。美乃美から出ていた『中国太極拳』には李が「束」の推手を用いている珍しい写真が掲載されている。


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