道徳武芸研究 八卦掌と暗器(7)

 道徳武芸研究 八卦掌と暗器(7)

武器を投げるという行為は現在はあまり行われないが、中国武術の槍や棍の伝書を見ると短刀を投げるという教えが随所に見られる。最初に短刀を投げて怯んだところを攻撃したり、相手が槍や棍を受けて膠着状態になった時にこうした古小型の武器を投げて使うと教えている。これからは宮本武蔵と同様な「持っている武器はあますところなく使いたい」という考えを見ることができる。また新陰流の燕飛(えんぴ)と称する一連の形の中に「浮舟」という技があって、これは太刀を相手に向かって投げている。その前提となるのが刀の棟に手を添える操法である。通常、日本刀は両手で柄を持つのであるが、片手で柄を持って、もう一方の手で棟を抑えて使う方法もあり、これは大体が江戸時代以前の剣術で多く用いられていたようである。こうした操法は短い間合いで刀を使うためのもので、甲冑を着た相手の甲冑の隙間を正確に狙って斬るための方法とされている。またこの間合いは短刀などと同じ間合いといえる。この操法の時に刀を水平に構えて投げるのが「浮舟」である。形ではいきなり刀を投げつけて来るのをこちらは切り落とすという展開になる。他に新陰流では足を斬るのに対処する特別の形があったりして面白い。新陰流では他流派の珍しい技の対策を多くしてくれたおかげて、当時の思いもよらない技法を知ることができる。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)