道徳武芸研究 八卦掌と暗器(4)

 道徳武芸研究 八卦掌と暗器(4)

八卦掌の「暗器」としては日月弧形剣や子母鴛鴦鉞、点穴針などが知られている。ただ日月弧形剣と子母鴛鴦鉞はどちらも区別されることがなく「半円形を組み合わせたもの」と見なされることが多いようであるが、これらは本来は「剣」と「鉞(おの)」であるから全くことなる武器である。形の上からしても「剣」は長いが、「鉞」は短い。ではこうした混同はどうして生じたのであろうか。日月弧形剣は「鈎」から生まれた武器と思われ、簡単にいえば「鈎」が小さくなったものと考えることができる。「鈎」の系統の武器には「相手を引っ掛ける」という特徴がある。攻防においては相手の体勢を崩すだけでも有効であるし、相手を斬るような時でも体勢が崩れていれば大きなダメージを与えることができる。また本来の「鈎」は馬に乗っている相手を引き落とすことも目的にしていた。先の曲がっているところは馬の足を刈るものともされている。劉雲樵は双鈎を八卦拳の八掌拳が原形と思われる動きで使っている。そうしたことが可能となるのは、日月弧形剣と双鈎が同じ系統の武器であるからである。ただ「暗器」としての日月弧形剣にはいろいろな形がある。半円(弧形)に大小があるもの、あるいは半円の「刃」の前が長く、後ろが短くなっているなどいろいろな工夫がなされている。このように形が特殊であるのはもし武器を落としても相手が使えないようにするためである。たとえば日本刀であれば、相手の刀を奪って使うことは容易であるが、日月弧形剣のような独特の形のものはそれをそのままに使うことはできない。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)