第七十一章 【世祖 注釈】〔両儀老人訳〕
第七十一章
【世祖 注釈】〔両儀老人訳〕
知らざるを知るは上。
(自分は何が分かっていないかを知っている人は優れている)
道を知ってはいても、それは具体的な何かを知っているのではない。こうした状態が最上とされる。
知るを知らざるは病。
(自分は本当は分かっていないのに、分かっていると思っている人からは弊害が生じる)
「病」とは害するところのあるものである。知らないのにむりに知っているように振る舞うのは害を生じさせる。
それただ病(やまい)を病(や)む。これをもって病まず。
(自分が分かっていると思う中にも分かっていないことがあるのではないかと疑うことで、分かっていないことを分かっていると思い込む弊害を除くことができる)
どうして病いとなるのかを知っていれば、病気になることもない。
聖人はこれ病せざるなり。その病を病むをもって、これもって病いせず。
(聖人は常に自分の理解が充分ではないのではないか疑っている。そうであるから分かっていないことを分かっているとする弊害に陥らないですむのである)
病を病むのが病気である。ただ聖人だけがこうしたことができている。