道徳武芸研究 形意拳の当身・七拳十四処打法(4)

 道徳武芸研究 形意拳の当身・七拳十四処打法(4)

当身で重要なことは意外性を相手に与えることである。意外な攻撃を受けることで相手の意識は混乱し、戦闘意欲を削がれることになる。日本の柔術での当身は大体において裏拳や掌が用いられるが、それは速さを重視するからに他ならない。思いもよらない速さで拳や掌が届くので意外性が生まれるわけである。このように柔術での当身は速さによるところが大きいのであるが、形意拳では意外な体の部位を用いる。肩や胯などはそうした部位であろう。肩はいうなら体当たりのことである。胯は腰での当てである。これは後ろから羽交い締めにされたような時には特に有効で、塩田剛三は三人掛けにおいてこの「当身」を使っている。それは左右の腕を捕られて、後ろから羽交い締めをする三人を同時に投げるもので、こうした身法はまさに形意拳に近いものである。植芝盛平の動きの基本は螺旋にある。一方、塩田剛三の動きは直線的で、このために大東流の影響を云々する妄説もあるが、塩田の動きと大東流の動きは全く異なっている。塩田の直線的な動きは合気道の呼吸力によるもので、それは師の盛平が最も呼吸力の充実していた頃に師事していたことと関係していよう。また戦争時期という時代背景とも関係していると思われる。塩田の内弟子時代は「合気は当身が七分」とされていた頃でもあり、そうした「当身」の力の背景となっていたのが呼吸力であったのである。


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