道徳武芸研究 形意拳の当身・七拳十四処打法(2)

 道徳武芸研究 形意拳の当身・七拳十四処打法(2)

中国武術では「意」を将軍として、手足を家来と見る見方もあり、「意」の使い方が重視されている。少林拳などでは戦闘意欲を如何に継続、保持して行くかを考える。そのためには呼吸や視線の使い方に独特の秘訣があり、一定度の緊張状態を心身に継続して作り出すことが求められる。一方で形意拳や太極拳などでは、殊更な戦闘意欲を持つことを良しとはしない。ただ「淡々」とした心身の状態を保つことを教えている。これが「鬆」である。「鬆」はよくリラックスすること、と説明され、それも全くの間違いではないが、単なるリラックスとしたのでは攻防に資するものではなくなってしまう。つまり「鬆」には「柔」と「静」とが共に必要であり、こうしたことにより、感覚としては所謂「気が満ちた」状態が作られなければならない。ここでの「静」が「意」の働きをいうものであることは留意されるべきであろう。つまり太極拳では「意」が「静」であるから体において「柔」を得ることが可能となるのである。このように「静」をベースとすることは形意拳や八卦掌でも同様である。ただその後の展開においては若干の違いもあるので注意しなければならない。形意拳では、ただ静かに立っているだけの三才式(混元トウなどと称されることもある)で専ら「静」を養う。そして次には静止した状態で左右の劈拳を繰り返す三体式を練るのであるが、それは「静」が極まって「動」が生じた時であり、これにより三才式から三体式へと移ることになる。


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