道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(4)

 道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(4)

よく「太極拳は内功を練るので鉄砂掌を練習する必要はない」などと言う人もいるが、これは妥当ではない。あくまで鉄砂掌は攻撃時における衝撃に耐える体を作るためのものであるから、太極拳でも鉄砂掌の練習は行う。一つ奥義を述べるならば、太極拳の鉄砂掌の鍛錬では掌が砂袋などに当たった瞬間に肘の力を抜くことが肝要である。こうして掌を重くするような感覚を育てる。「内功があれば鉄砂掌を練らなくても良い」とされる風潮の背景としては、鉄砂掌を鍛えると目を悪くすることなどの「弊害」が語られることがあげられる。このため「秘薬」を用いなければならない、などと教えられることもあるが、鉄砂掌の「秘薬」はあくまで消毒以上の効果を期待されるものではないのである。八卦拳では「逆剥けになったら鉄砂掌をしてはいけない」とされている。これ程に傷口から病原菌の入ることを警戒していたわけである。一方で目を悪くしたり、指がうまく動かなくなる、肩が上がらなくなるなどは神経の異常によるもので過度な鍛錬が原因とされる。あくまで鉄砂掌は衝撃への耐性を得るものであるのに、掌を鉄の如くにするものと誤解して衝撃を与えすぎると思わぬ障害が生まれることにもなる。現代であれば鉄砂掌の「秘薬」はアルコール消毒をすれば充分であろう。


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