道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(3)

 道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(3)

砂袋はまた吊り下げて使うこともある。これはバレーボールくらいの砂袋をいくつか周囲に吊り下げて打つ練習をするわけである。こうした練習は拳や掌を硬くするというより、いろいろな当て方を練習してその衝撃に対して体をどのように使うかの練習が主目的となる。かつては「巻藁=拳タコ=必殺拳」という空手幻想が広く存していたが、ここ何十年かの間に巻藁で拳タコを作るよりはサンドバッグで間合いや正確な打ち方を習得した方が良いと考えられるようになってきた。これは逆に本来の「巻藁」の形に戻ったということができるのかもしれない。つまり鉄砂掌としての「巻藁」は拳を固めるためのものではないということである。一方、打った時の衝撃だけではなく、相手の攻撃を受けた時の衝撃にも耐える必要がある。それを練習するのが木人である。木人は詠春拳が有名であり、秘伝の練功法とされているが、それは打ち方に極意があるということである。詠春拳は相手の攻撃を受けると同時に相手の体軸を崩すことを理想とする。そうであるからむやみに強く受けると相手の腕が離れてしまうので、適度な粘りのある受け方でなければならない。粘りといっても、詠春拳では太極拳とは反対に力を入れることで粘りを作り出す。このように鉄砂掌では「当て方」が重要なのであって、当てた時に力を抜く、入れる、手首を曲げる、肩から打つなどいろいろな秘伝、秘訣が門派によって存している。


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