道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(2)

 道徳武芸研究 鉄砂掌を考える(2)

鉄砂掌でもっとも代表的な煉功法は台の上に砂などを詰めた袋(砂袋)を置いてそれを打つものであるが、他には桶や鍋の中に砂や豆を入れてそれを打ったり、掌を挿し入れたりする方法もある。ちなみに八卦拳では緑豆を桶の中に入れて使う。門派によっては、これを砂で行う場合もあり、また「上達」すると鉄の玉に替えると教えることもある。かつて空手の貫手で畳を貫通させるパフォーマンスを行う人も居たが、これは「漫画」の世界のことで、指先はいくら鍛えても畳を貫通させる程、硬くはならない。八卦拳でいうなら緑豆以上の堅いものへの耐性を得る必要はないといえるであろう。これは相手の体に指が当たった時に、その衝撃で怪我をしない程度の練習ができていれば良いということである。つまり掌で打ったり、拳で打ったりして、相手の体に当たった時にその衝撃に耐えられれば充分なわけである。砂袋を用いる練習には他にも柱などに結びつけて、それを打つものもあるが、これは空手の巻藁と同じといえよう。中国では砂袋でも特別な所の砂でなければならないとか、袋は犬の皮で作るのが良いとされることもある。柱などに結わえ付ける方法はひとつには「姿勢を作る」という目的もある。本来「巻藁」は弓術で使われていたもので、ごく近いところに藁の束を置いて姿勢の矯正を練習したのであった。こうしたことからすれば空手の巻藁も、拳を強くするものというよりも姿勢を作ることが第一義であったのではないかと思われる。


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